単結晶X線構造解析による構造未知単結晶の構造解析

河目 直之
(4期生)


要旨
 構造解析の手段のひとつ単結晶X線結晶解析法は単結晶を対象とし、結晶中の電子によるX線の散乱を利用して単位格子の中の電子密度分布を求め、これによって結晶を構成する原子の位置を決める方法である。この方法を利用すれば、結晶の時間的・空間的に平均化された構造を求めることが可能である。平均化された構造というのは物の性質を知ろうとする上で最も基礎になるものであり、それゆえに重要であるといえる。

 本研究の試料としては有機化合物の単結晶(分子式C6H12N2O5)を用いた。この結晶は近年需要が高まっている純エナンチオマーの原材料となるラセミ体を得るために合成されたものである。

 本研究では、単結晶X線結晶解析法を用いて構造未決定の単結晶の構造解析を実行し、単位格子内の原子位置を決めるとともに、この結晶中のエナンチオマーの含有状態を知るために対称中心の有無を調べた。

 解析の結果、空間群はP21/n (Monoclinic)と決まった。また、対称中心がある事が分かり、この結晶がラセミ体であることも確認出来た。

 原子位置は水素以外の原子については決まり、これにより結晶内で原子団が作っている構造の骨格がほぼ明らかになった。この時Rファクターはまだ比較的大きい(約19.44%)が、今後水素原子の位置を決め、その後すべての原子の温度因子を異方性にして最終構造を求めたときにはRファクターはかなり下がっていることが予想できた。

 また、今回は高角の反射まですべて使ったが、高角の反射を切り捨てて解析すればさらにRファクターは下がると予想される。

本文
  1. 緒言
  2. 実験方法
    (1)実験の手順
    (2)測定条件
  3. 結果
    (1)空間群・格子定数
    (2)原子座標・構造図
  1. 考察
    (1)空間群について
    (2)解析した構造について
    (3)対称中心の有無について
  2. 今後の課題
  3. 参考文献