Logo2010年3月三宅島実験レポート

三宅島全景 雄山火口

 2010年3月、三宅島において実地テストを行った。火山近傍で行う実験としては3回目であり、スコリア丘や枯れ木の散乱する斜面、火口内壁を想定した断崖など、多様な地形で走行試験を行うことができた。


伊豆大島実験からの機体の変更点

機体写真 機体写真

 今回の変更点を以下に上げる。

電子系統

 dsPICを搭載し、ほむら搭載のマイコン処理能力が大幅に向上した。これに合わせて、GPS制御用、モーター制御用の二つのマイコンを新たに搭載し処理を分散することで、通信速度を向上させた。

ソフトウェア

 ほむらの制御用ソフトウェアを改良し、処理速度やメンテナンス性を向上させた。

新規センサーの搭載

 二酸化炭素センサーと硫化水素センサーを新たに追加した。さらに、カメラを、データ圧縮能力に優れるJPEGカメラへと、変更した。

ロープ

 火口内部へと吊るして下ろす場合を想定し、吊り下げ用ロープおよびロープ装着機構を準備した。

ロープ装着!いざ!

実験目的

 三宅島は、火山ガスの噴出により火口周辺に広がっていた木々が立ち枯れ、木片が散乱するという特有の地形が広がっている。また、現在もガスの影響は強く、草本などもあまり存在しない場所もある。
 今回は、このような火山特有の様々な環境での走行テスト、ふもとから山頂まで自力で走行する可能性の検証、およびロープを使って急崖を昇降する手法の検証を目的とした。


実験結果

 まず、三宅島七島展望台付近から、山頂へ向けての走行実験を行った。枯れ木が多く、太い枝に車体ごと乗り上げるなどして、動けなくなることが数回あった。しかし、それ以外の原因で走行不能に陥ることはなく、最大34度の斜面も踏破した。車輪脱落については今回も起きなかったが、チェーンが脱落することがあった。途中一度の充電を挟み、最終的に山頂までの工程の半分程度を走破した。

調整中 登坂中 木のある道を

 七島展望台付近の高さ20m程度の急崖を利用して、ロープを使った昇降実験を行った。ほむらの機体後端に登山用ナイロンザックを取り付け、人がゆっくりとロープを繰り出す形で、崖から下ろした。ロープが土壌に食い込むなどの問題はあったものの、ほぼ問題なく崖を降り、また昇ることができた。車輪を回さずに昇降する実験も行ったが、途中ですぐに引っかかるなどしたため、自走可能な構造を持っていることが重要であることが分かった。

駆け下りる 崖を降り切った 引き上げられる
===崖を降りるほむらの動画===

 三七山にて遠隔での走行実験を行った。ロープを付けない状態だと、水平170m、比高17mのコースをほぼ問題なく往復したが、昇降用のロープを付けたまま走らせると、地面とロープの摩擦で紐に強い圧力がかかり、斜面の途中で登れなくなった。また、車輪にロープが絡まりやすく、現方法のままではロープを付けたまま斜面を移動するのはほぼ不可能であるといえる。崖の昇降に必要なロープを平地ではどうするか、今後の課題である。

スコリア丘へ挑戦中 雨にも負けず 紐を引きずって登坂

 今回の走行試験では、チェーンやスプロケット部分に泥が付着し、車輪が回転しにくくなるという問題が発生した。チェーンがむき出しの現在の構造では、付着を防ぐのはほぼ不可能であるため、チェーン部分を完全に覆い隠すような構造が必要かもしれない。

 新規センサーとして追加した二酸化炭素センサー、硫化水素センサーは、ほぼ問題なく機能した。JPEGカメラについては、ソフトウェアの調整が不十分であったこともあり、撮影テストを十分に行うことができなかった。


まとめ

 今回の実験では、伊豆大島試験では十分に実験できなかった、チェーンを付けての登坂テストを行い、かなり急な斜面でも登ることができることを示した。また、ロープでの昇降が可能だったことから、吊るして火口に下ろし、データを採取させる、というような使い方も実際に可能であることが示せた。

 一方で、ロープを付けた状態での平地走行問題、チェーンへの泥つき問題、さらにふもとから火口へ到達させる、という使い方をする場合には電池容量が足りない、といった問題点が明らかになった。チェーンについては、現在チェーンを完全に覆う形の新機体を設計中である。電池容量についても、現在のニッケル水素電池からリチウムポリマー電池への移行を検討中である。

 今後は、新機体の開発とさらなるソフトウェアの調整を行う予定である。


Mobile Sensor for Volcanic Observation "HOMURA"
火山観測用自走式センサー「ほむら」
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2010 5/15更新