2010年度 地球科学実験B(後期セメスター) 各実験の紹介


2010年度の実験は以下のテーマで行います。受講者は,一つの実験テーマを半期を通じて取り組みます。

曜日 教員 分野 テーマ 内容
大塚 成昭 測地 高さの測定(精密水準測量)による地殻変動の検出 この実験での具体的なテーマは「高さ」です。「高さ」の測定は「水準測量」と呼ばれています。この実験では総合人間学部のキャンパスから吉田山山頂までの精密水準測量を行います。君たちの測量結果と先輩たちの結果と比較して地殻上下変動の検出を試みます。前半は屋外で測量を行います。後半は、パソコンでデータ処理をし、発表会に向けてプレゼンテーションの準備をします。 体を動かすことが好きな人、晴れ男・晴れ女大歓迎(何しろ雨に降られると.....)。

林 泰一

気象 大気と地面の水・熱交換

はるか太陽から地球に届くエネルギーの大部分は、地球表面の陸面、海面に与えられる。その後、大気の乱流によって、地面、海面付近の大気と熱や水蒸気の形でエネルギーを大気に輸送される。その素過程を実際に観測する。地面(海面)付近の大気境界層(接地層)での顕熱、水蒸気、運動量の輸送過程の観測を,精密な風速計,温度計,湿度計を使って行う。さらに,CO2の交換も併せて観測する。気象観測機器の原理、検定の後、防災研究所の潮岬風力実験所で実地観測を行う。

大野 照文 古生物 古生物学入門=学問の楽しみ方入門

観察や観測に始まり、仮説をたて、検証・棄却するというループを繰り返しながら核心にせまってゆく科学の方法を楽しく身につける。まず、緻密な観察力、大胆な仮説構築・検証力、論敵との丁々発止のディベートを制する能力を鍛える。その後、野外調査と採取試料の調査を通じて鍛錬された能力を試す。ありふれたものが、半年後には今と全然違って見え、地球科学のみならず、広く自然・人文科学に通底する学問の楽しみかたに開眼することができる、、、、はずである。

鎌田 浩毅 火山地質 由布・九重・阿蘇火山の火山見学旅行

九州の由布・九重・阿蘇火山まで出かけて行き、現地で火山噴火の堆積物を手にとって観察し、実際に起きた噴火現象を推理します。10月25日(月)14:30吉田南2号館4階412室に集合、夕方に大阪南港を出発し、翌朝別府観光港に着き、ジャンボタクシーで巡検し、阿蘇で1泊宿泊します。27日(水)夕方に別府観光港から船に乗り、28日(木) 早朝に京都に帰ります。1限の講義から出席可能。後期半期分の実験を集中して行う火山フィールドワークです。船賃・宿泊費・食費などの実費は個人負担です。 [参考書:PHP 新書 『火山はすごい』740円 (生協で販売中)] (参考:2001年度実験の記録

齊藤 昭則 可視化

地球惑星科学データの3次元的可視化

様々な地球惑星科学データの3次元的なプロットを作り、異なるデータの比較を行う。まず、KMLやIDL等の計算機言語、WWWを用いたデータベース、Space physicsを中心とした地球惑星科学について基礎的な事を学び、その後で、オーロラ観測データや火星表面画像などの地球惑星科学の観測データをそれぞれ一つ選んで3次元のプロットを作成し、その物理的な意味を考察する。計算機に関する経験は特に必要としない。

紀本 岳志 生命起源 生命起源を推理する

生命起源班では,地球誕生後の原始環境のもとで,どのような反応が起こり無生物状態から生命が誕生していったかを推理しながら,実験的に新たな反応を探ることを1998年度より行ってきた.その中で,2003年度までの一連の実験で,生体構成成分であるアミノ酸の一種であるアスパラギン酸の新規合成法を発見した.また,2007年度には,原始海洋環境下でのアルミニウム錯体の重要性についての知見を得た.昨年度(2009年度)は,実験の効率を上げるために,新たに「マイクロ波合成法」を応用することで,従来数日間かかっていたアミノ酸合成を数時間に短縮出来ることを見いだした.本年度は,この知見をもとに,さらに未知の領域への挑戦を続けていきたいと考えている.

鈴木 寿志 古生物

砥石型珪質泥岩層の追跡

京都盆地周辺に分布する丹波地体群には、特徴的な珪質泥岩がみられる。それは層序的に古生代ー中生代境界に位置し、昔から刃物を研ぐ砥石として使われていたことから、「砥石型珪質泥岩」よばれる。この砥石型珪質泥岩は、高雄などの有名な産地以外にも小さな露出がしばしばみられるが、既存の地質図に必ずしも記載されていない。本実験では、京都盆地周辺の野外調査を中心に、砥石型珪質泥岩の分布を追跡し、地質構造を考察する。また珪質泥岩中に含まれるコノドント化石を用いて詳細な年代を決定する。

向井 厚志

重力

地球と吉田山の密度測定

重力測定の目的のひとつは地下構造の探査です。足元にある岩盤の質量が大きいほど、その引力によって重力が大きくなるため、逆に重力分布から地下の密度構造を推定することができます。実験では、まず、建物の各階で重力測定を行ない、重力の鉛直勾配から地球の平均密度を求めます。次に、野外に出て吉田山周辺の重力測定を行ない、吉田山の平均密度を推定してみます。

谷口 慶祐 地震 脈動は本当に海のせい?

地球上どこでも見られる脈動ですが、もちろん比叡山の山中でも周期数秒で揺れ続けています。それははたして海の波のせいなのでしょうか。防災科学技術研究所が日本全国に設置した地震計のデータをできるだけ多数の点で解析し、海岸付近、山岳部での脈動の状態がどのようになっているかを調べます。またわれわれ自身で比叡山延暦寺付近で観測を2回程度行います。

吉村 令慧 地球電磁気

電磁気学的に地面の下を"視る"

固体地球物理の分野では、地球内部の構造の把握が盛んに行われています。地下を「直接的」に見ることが困難であるため、「間接的」に物事を捉えようと物理探査の手法が用いられることが多くあります。この実験では、現状掘り返すこと(直接視)の困難なフィールドで、主に電磁気学を基礎とする種々の物理探査(間接視)を実施し、極浅部の構造の把握を目指します。フィールド候補は、農学部G、大文字山等を考えています。

高橋けんし

大気科学

温室効果気体を直接測る

大気には組成比が1%にも達しない“少数派”がいます。少数派の代表格である二酸化炭素は、地球の放射収支に影響する温室効果気体です。二酸化炭素のその場観測を通じて、大気中での挙動を実感してみましょう。観測場所や観測期間の設定も含めて、観測をデザインしてみましょう。また、二酸化炭素をはじめとして、“少数派”の大気成分を高感度に計測する手法について、原理を理解してもらおうと思います。