2009年度 地球科学実験B(後期セメスター) 各実験の紹介


2009年度の実験は以下のテーマで行います。受講者は,一つの実験テーマを半期を通じて取り組みます。

曜日 教員 分野 テーマ 内容
大塚 成昭 測地 高さの測定(精密水準測量)による地殻変動の検出 この実験での具体的なテーマは「高さ」です。「高さ」の測定は「水準測量」と呼ばれています。この実験では総合人間学部のキャンパスから吉田山山頂までの精密水準測量を行います。君たちの測量結果と先輩たちの結果と比較して地殻上下変動の検出を試みます。前半は屋外で測量を行います。後半は、パソコンでデータ処理をし、発表会に向けてプレゼンテーションの準備をします。 体を動かすことが好きな人、晴れ男・晴れ女大歓迎(何しろ雨に降られると.....)。

林 泰一

気象 大気と地面の水・熱交換

はるか太陽から来たエネルギーの大部分は、地球表面の陸面、海面に与えられる。その後、地面、海面付近の大気と熱や水蒸気の形で、エネルギーを大気と交換する。その素過程を実際に観測する。地面(海面)付近の大気境界層(接地層)での顕熱、水蒸気、運動量の輸送過程の観測を実施する。できれば、CO2の交換も考える。気象観測機器の原理、検定の後、防災研究所の潮岬風力実験所で実地観測を行う。

大野 照文 古生物 古生物学入門=学問の楽しみ方入門

観察や観測に始まり、仮説をたて、検証・棄却するというループを繰り返しながら核心にせまってゆく科学の方法を楽しく身につける。まず、緻密な観察力、大胆な仮説構築・検証力、論敵との丁々発止のディベートを制する能力を鍛える。その後、野外調査と採取試料の調査を通じて鍛錬された能力を試す。ありふれたものが、半年後には今と全然違って見え、地球科学のみならず、広く自然・人文科学に通底する学問の楽しみかたに開眼することができる、、、、はずである。

鎌田 浩毅 火山地質 由布・九重・阿蘇火山の火山見学旅行

九州の由布・九重・阿蘇火山まで出かけて行き、現地で火山噴火の堆積物を手にとって観察し、実際に起きた噴火現象を推理します。10月19日(月)14:30吉田南2号館4階412室に集合、夕方に大阪南港を出発し、翌朝別府観光港に着き、ジャンボタクシーで巡検し、阿蘇で1泊宿泊します。21日(水)夕方に別府観光港から船に乗り、22日(木) 早朝に京都に帰ります。1限の講義から出席可能。後期半期分の実験を集中して行う火山フィールドワークです。船賃・宿泊費・食費などの実費は個人負担です。 [参考書:PHP 新書 『火山はすごい』740円 (生協で販売中)](参考:2001年度実験の記録

齊藤 昭則 可視化

地球惑星科学データの3次元的可視化

様々な地球惑星科学データの3次元的なプロットを作り、異なるデータの比較を行う。まず、KMLやIDL等の計算機言語、WWWを用いたデータベース、Space physicsを中心とした地球惑星科学について基礎的な事を学び、その後で、オーロラ観測データや火星表面画像などの地球惑星科学の観測データをそれぞれ一つ選んで3次元のプロットを作成し、その物理的な意味を考察する。計算機に関する経験は特に必要としない。

加藤 護

地震

緊急地震速報

緊急地震速報は、揺れる前にお知らせします、という気象庁発の地震情報です。しかし、その内容や意味などについてはまだよく知られていないところもあります。このテーマでは緊急地震速報を学び、その内容を社会に伝える、という課題にとりくみます。

紀本 岳志 生命起源 生命起源を推理する 生命起源では過去6年間原始海洋での非生物的アミノ酸合成に関しての新たなる知見を求めて未知の実験を行っている.この中で2003年までに新しいアスパラギン酸の合成法を発見し,それを結晶化させることに成功した.これからは,いよいよ絶対不斉合成の謎に迫りたいと思っている.
鈴木 寿志 古生物

丹波層群の地質年代/微化石の成長縞の観察

京都市北部の丹波層群の地質年代を、放散虫・コノドント・紡錘虫などの化石を用いて明らかにする。/放散虫もしくはコノドントの成長縞を観察し、どのように骨格形成を行ったか考察する。

川本 竜彦 高圧実験 地球内部の水を可視光で見る 地球内部でどんなことが起こっているのか知るために、高圧や高温の世界を可視光で覗きます。
自分の目で見たり、CCDカメラでラマン散乱光をとらえたりします。観察を通して、地球内部の水の性質を理解することをめざします。
谷口 慶祐 地震 京都の脈動は伊勢湾から?

京都で見られる脈動(常に存在する地面の振動で周期数秒)は,伊勢湾に打ち寄せる太平洋の波によって生み出され,あまり減衰せずに伝播してきたものである,という仮説を検証します。

吉村 令慧 地球電磁気

吉田G解剖計画

固体地球物理の分野では、地球内部の構造の把握が盛んに行われています。地下を「直接的」に見ることが困難であるため、「間接的」に物事を捉えようと物理探査の手法が用いられることが多くあります。しかしながら、地下構造を間接的に把握するためには、複数の情報を総合的に「推理」することが重要になります。この実験では、現状掘り返すこと(直接視)の困難な吉田Gを対象に、主に電磁気学を基礎とする種々の物理探査(間接視)を実施し、極浅部の構造の把握を目指します。

酒井 敏 気象

街はどう冷える?

日中、太陽からの光を吸収して地表付近の気温は上昇し、夜間、放射冷却により気温は下がる。しかし、都市部では日中に蓄えられた熱量が大きいため、放射冷却だけでは冷やしきれず、郊外から冷たい空気が流入することで、夜間の気温が下がる。
その過程を調べるため、気球を繋留して夕方から夜にかけての上空の気温変化を測定する。