回転系における対流

田中 資也
(1期生)


要旨
 海洋は、急激な気候変動を抑え、地球環境の維持に貢献するとともに、熱の南北輸送においても、大気に匹敵するほどの役割を果たしている。このように、重要な役割を担っている海洋について、その循環プロセスや対流の規模を知ることは、長期的な気候変動を予測する上で必要なアプローチだと考えられる。しかし、熱対流については、静止系ではベナール対流でよく知られているが、海洋などを論じる上で必要な回転系においては、あまり研究されていないのが現状である。対流の水平スケールについては、Boubnov & Golityn (1986)が実験によりパラメーターに依存する水平スケールの法則を見つけているが、回転系での対流の様子を表したものは、定量的にそのパターンを可視化したNakagawa & Frensen (1955)があるぐらいで、温度場、速度場などの定量的な分析(及び可視化)は行われていない。そこで本研究においては、水平スケールに関するSakai (1997)の理論を実験的に検証するとともに、液晶を用いて、速度場、温度場を定量的に求めてみた。

 その結果、水平スケールに関しては理論式に一致するデータを得ることに成功した。また、温度場については色相-温度パレットを作成することにより、速度場については、相関値を使って領域の軌跡を追うことにより、現象と矛盾しない結果を得られた。このように、定量的なデータを得ることは、今後の研究の発展につながるとともに、そのデータを使えば、より厳密に水平スケールを導き出す実験を行うこともできるだろう。

本文
  1. はじめに
  2. 水平スケールに関する理論
  3. 実験
  4. 水平スケールに関する考察
  5. 温度解析
  1. 速度解析
  2. 2つの場に関する考察
  3. 結論
  4. 今後の展開
  5. 謝辞