地球規模の炭素循環における森林の役割と大陸地形

中田 淳子
(3期生)


要旨
 本研究では、地球上の炭素循環のなかで陸域植生が果たしている役割を検証し、また大気中のCO2濃度増加とそれに伴って起こりうると考えられている地球温暖化によって生態系が受けると思われる影響を、単純化されたモデルを用いて予想した。

 第一部では、温度分布だけに基づいて簡易化した植生区分を用い、各区分における炭素保有量から、現地球の大陸において生態系が保持する炭素量を試算した。そして温暖化によって生態系が緯度と垂直方向に移動すると仮定し、移動前と移動後の炭素量を比較した。

 その結果、温暖化によって約107%の炭素保有量増加が見られ、生態系全体では約200Pg増加した。また、現地球と同面積で経度にそって分布するように配置された仮想大陸を想定し、同様の試算を行った。その結果、仮想大陸においては温暖化によって110%の炭素量増加が見られ、生態系全体では270Pgの増加となった。低緯度付近の大陸面積が広いほど炭素量は増大することがわかった。

 従って、温度の影響だけを考えた場合、地球温暖化は生態系が保有する炭素量を増加させるという結果になった。

 第二部では、一部で用いた仮定を導き出す過程で用いた生態系の特質について述べる。陸域植生における物質生産の仕組みと森林内の炭素循環の様子、またそれがCO2濃度増加や気温上昇によって受ける影響を示した。

本文
  • 序論
  • 第一部
    第1章 仮定
    第2章 2つの大陸を用いた炭素貯蔵量の計算
  • 第二部
    第3章 気候と植生分布
    第4章 物質生産と消費
    第5章 土壌有機炭素の動態と物質循環
    第6章 CO2濃度上昇と温度上昇が及ぼす影響
  • 謝辞
  • あとがき
  • 参考文献
  • 付表