岩手山における融雪型火山泥流の対策の検討

土井 健太郎
(4期生)


要旨
 岩手山では1995年9月から火山性地震・微動が観測され、それ以来、気象庁、東北大学、岩手大学等の研究機関が地震計、震度計を増設したり、監視カメラを設置するなど観測体制を強めてきた。また、行政・専門家は対応機関として各種検討会を設置し、関係各機関の防災体制を構築してきた。その活動の中で、「岩手山火山災害対策検討委員会」は、各機関の対策のベースとなる資料として、地質学的な解析から分かった過去の噴火事例を基に、今後どのような噴火が起こるかを想定した「岩手山火山防災マップ」を作成した。

 このマップの中で被害範囲が最も広く予想されているのが、積雪時の火砕流による融雪型火山泥流の流下域であり、盛岡市や西根町の市街地まで達している。また溶岩流等に比べると、火山泥流は高速(15〜20Km/h : Nevado del Ruiz, 1985)で流れ、また融雪や土砂の流出によって体積が膨大になり非常に破壊的であるため、その対策は重要である。

 しかし、火砕流(高温物質)による融雪の機構は詳しくは明らかになっておらず、そのため泥流の規模を推定するための計算方法も非常に脆弱であると言わざるを得ない。

 そのため、本研究では長期的には、岩手山における火山防災を科学的、社会的な側面から総合的に検討し、より発展させるという視点に立ちながら、その手始めとして、火山泥流について「岩手山火山防災マップ」を基に研究する。

本文
  1. 目的
  2. 研究
    (1)主要項目の説明
     1.岩手山
     2.岩手山火山防災マップ
     3.火山泥流
    (2)NEVADO DEL RUIZ火山の噴火、火山泥流
    (3)NEVADO DEL RUIZの結果から
    (4)融雪水量の計算モデル
    (5)計算モデルの検討
    (6)岩手山で行われている融雪型火山泥流の予測の方法
  1. 結論・考察
  2. 謝辞
  3. 参考文献・資料
  4. 付録