炭素循環から見る地球温暖化現象
-人間活動起源のCO2濃度収支-
 

浅沼 直樹
(2期生)


要旨
 本研究では炭素循環という観点から地球温暖化現象を検証した。簡単のため、人為的に排出されるCO2量をインプット、大気中に蓄積するCO2量をアウトプットとし、その間の関係を探った。

 第1章では、地球の大気の組成とその温度の決定されるメカニズムについて述べ、温室効果気体の果たす役割の重要性について述べた。第2章では温室効果気体全般の発生源とその変遷を辿り、温室効果気体の中でも二酸化炭素(CO2)はその影響力が大きく、地球温暖化現象を論じる上では欠かせないことを述べた。第3章ではCO2の挙動を知る上で不可欠な炭素循環について説明し、CO2が大気・海洋・陸上生物圏などで吸収・排出される過程を述べ、また人為的に排出されるCO2の各サブシステムの収支の見積もりとその問題点について論じた。第4章ではインプットの歴史的変遷と各地域毎の排出量について見ていった。産業革命以降CO2の増加は著しく、また今後もアジア・中南米・アフリカなどの低開発国と呼ばれる国々が成長を続けると、さらに大気中に放出されるCO2量が増えることが予想される。第5章ではアウトプットの観測体制とそのデータについて述べた。第6章ではインプットとアウトプットの相互関係について述べ、インプットの58%が大気中に残存すると仮定するとアウトプットとよい一致を示すことが分かった。次にインプットとアウトプットの緯度毎の対応を見ていったが、インプットの95%は北半球の中・高緯度に集中していて緯度毎の対応は見られなかった。次に緯度毎のアウトプットの濃度の季節変動に注目し、北半球高緯度から赤道に向かってCO2濃度変化のピークが出現する時期が遅くなっていることに気づいた。このことから北半球の中・高緯度地域の「光合成による短期の季節変動」の影響が南方に伝播しているのではと考えた。これは南半球の観測地点で通常考えられる季節変動から異なるパターンが観測されることからも示唆される。同様に、インプットである人為的に排出されるCO2も北半球から南半球に伝播されているのではないかと思われる。また大気中の平均CO2濃度増加率も北半球高緯度から南半球高緯度に向かって減少していることもこのことを支持する。またインプットが0だとすると、南半球のほうが北半球よりも約1ppm高くなると予想される。このことから北半球の中・高緯度の陸上生物の果たす役割は大きいのではないかと思われる。

本文
  • 序論
  • 第1章 地球の大気
  • 第2章 地球温暖化のメカニズム
  • 第3章 炭素循環
  • 第4章 インプット(化石燃料の燃焼によるCO2排出量)について
  • 第5章 アウトプット(大気中のCO2蓄積量)について
  • 第6章 インプット−アウトプット
  • 結論
  • 謝辞
  • あとがき
  • 参考文献
  • 付表