2011年度 地球科学実験B(後期セメスター) 各実験の紹介


2011年度の実験は以下のテーマで行います。受講者は,一つの実験テーマを半期を通じて取り組みます。

曜日 教員 分野 テーマ 内容
大塚 成昭 測地 高さの測定(精密水準測量)による地殻変動の検出 この実験での具体的なテーマは「高さ」です。「高さ」の測定は「水準測量」と呼ばれています。この実験では総合人間学部のキャンパスから吉田山山頂までの精密水準測量を行います。君たちの測量結果と先輩たちの結果と比較して地殻上下変動の検出を試みます。前半は屋外で測量を行います。後半は、パソコンでデータ処理をし、発表会に向けてプレゼンテーションの準備をします。 体を動かすことが好きな人、晴れ男・晴れ女大歓迎(何しろ雨に降られると.....)。

林 泰一

気象 大気と地面の水・熱交換

太陽から地球に届くエネルギーの大部分は、地球表面の陸面、海面に与えられる。その後、大気の乱流によって、地面、海面付近の大気と熱や水蒸気の形でエネルギーが大気に輸送される。その素過程を実際に観測する。地面(海面)付近の大気境界層(接地層)での顕熱、水蒸気、運動量の輸送過程の観測を,精密な風速計,温度計,湿度計を使って行う。さらに,CO2の交換も併せて観測する。気象観測機器の原理、検定の後、防災研究所の潮岬風力実験所で実地観測を行う。

大野 照文 古生物 古生物学入門=学問の楽しみ方入門 観察や観測に始まり、仮説をたて、検証・棄却するというループを繰り返しながら核心にせまってゆく科学の方法を楽しく身につける。まず、緻密な観察力、大胆な仮説構築・検証力、論敵との丁々発止のディベートを制する能力を鍛える。その後、野外調査と採取試料の調査を通じて鍛錬された能力を試す。ありふれたものが、半年後には今と全然違って見え、地球科学のみならず、広く自然・人文科学に通底する学問の楽しみかたに開眼することができる、、、、はずである。
鎌田 浩毅 火山地質 由布・九重・阿蘇火山の火山見学旅行

九州の由布・九重・阿蘇火山まで出かけて行き、現地で火山噴火の堆積物を手にとって観察し、実際に起きた噴火現象を推理します。10月24日(月)14: 30吉田南2号館4階412室に集合、夕方に大阪南港を出発し、翌朝に別府観光港に着き、ジャンボタクシーで巡検し、阿蘇で1泊宿泊します。26日(水)夕方に別府観光港から船に乗り、27日(木) 早朝に京都に帰ります。1限の講義から出席可能。後期の実験を集中して行う火山フィールドワークです。船賃 ・ 宿泊費・食費などの実費は個人負担です。 [参考書:PHP 新書『火山はすごい』740円 (生協で販売中)](参考:2001年度実験の記録

紀本 岳志 生命起源

生命起源を推理する

36億年前の地球表面は,酸性の原始海洋で覆われていた.この中で化学反応が起こり,原始生命を構成するアミノ酸や糖,核酸などが合成され,生命の誕生につながった.この無生物から生物に至る過程に想いを馳せながら新たなる反応へ挑戦する.今までに,会アスパラギン酸の新しい合成反応を見いだし,それらの成果を踏まえ,本年は,原始海洋に高濃度で存在したと推察され,昨年のノーベル化学賞にもなったホウ素の謎に迫りたいと考えている,

鈴木 寿志 堆積・古生物 地球史の出来事を探る

46億年の地球の歴史は地層や化石に記録されています。過去 の地球の出来事を探る手法として次のいずれかの実験を予定しています。(1)津波堆積物の解析、(2)プランクトン化石の成長縞。(1)では津波で運ばれて沿岸に堆積した津波堆積物 の堆積構造を調べます(野外調査を行うことも検討しています)。(2)では岐阜県各務原市で野外調査を行い,中生代ジュラ紀のプランクトン化石を用いて、その成長縞を検出することを試みます。

向井 厚志

重力

吉田山の地下探査

重力測定の目的のひとつに「地下構造の探査」があります。足元にある岩盤の質量が大きいほど、その引力によって重力が大きくなるため、重力分布を調べることで地下の密度構造を推定することができます。実験では、吉田山を縦断する測線で重力測定を行ない、吉田山地下の密度の不均質構造を推定します。

小木曽 哲 高圧実験 地球内部を再現する

地球の内部は深さ2900kmまで岩石でできています。そして、そこは高温高圧の世界です。本実験では、岩石を高温高圧状態に置いたら何が起こるかを、高温高圧発生装置とX線分析装置を使って調べます。その結果をもとに、地球の内部で何が起こっているかを考察しましょう。

吉村 令慧 地球電磁気 電磁気学的に地面の下を"視る"

「固体地球物理の分野では、地球内部の構造の把握が盛んに行われています。地下を「直接的」に見ることが困難であるため、「間接的」に物事を捉えようと物理探査の手法が用いられることが多くあります。この実験では、現状掘り返すこと(直接視)の困難なフィールドで、主に電磁気学を基礎とする種々の物理探査(間接視)を実施し、極浅部の構造の把握を目指します。昨年度発見した「吉田山異常」周辺でより稠密な調査で実体に迫りたいと考えて
います。」

酒井 敏

気象

雨粒を止める

雨は雲の中で水蒸気が凝結してすぐに落ちてくるわけではない。多くの場合、積乱雲の中で上昇気流に乗って、数Km上空まで吹き上げられ、一旦、凍ったあと、融けながら落ちてくる。この実験では、1.落下する雨粒の写真を撮って、その形と落下速度を計測する。2.実験室の中で上昇気流を作って、その中に雨粒を止め、自分の目で雨粒を見ることを目標にする。