2008年度 地球科学実験B(後期セメスター) 各実験の紹介


2008年度の実験は以下のテーマで行います。受講者は,一つの実験テーマを半期を通じて取り組みます。

受講者数の都合により,当初月曜日に予定していた「断層探査」(石川尚人担当)は本年度は行いません(火曜日に行います).

曜日 教員 分野 テーマ 内容
大塚 成昭 測地 高さの測定(精密水準測量)による地殻変動の検出 この実験での具体的なテーマは「高さ」です。「高さ」の測定は「水準測量」と呼ばれています。この実験では総合人間学部のキャンパスから吉田山山頂までの精密水準測量を行います。君たちの測量結果と先輩たちの結果と比較して地殻上下変動の検出を試みます。前半は屋外で測量を行います。後半は、パソコンでデータ処理をし、発表会に向けてプレゼンテーションの準備をします。 体を動かすことが好きな人、晴れ男・晴れ女大歓迎(何しろ雨に降られると.....)。

西 憲敬

気象・気候 雲の成長と移動の観測

冬のしぐれの時には低い雲が北西から流れてくる。これらの雲はどのくらいの高さにあり、どのように変化するのだろう。また、かなり上空のジェット気流の近くなどには巻雲と呼ばれる筋状の雲ができるが、この形態はユニークで意外と変化も早い。秋から冬に見られる雲の成長と消滅、移動をさまざまな方法で観測してみよう。

大野 照文 古生物 古生物学入門=学問の楽しみ方入門 地球科学は、地球とその環境、そしてそこに住む生命の46億年の歴史を探る。観察や観測に始まり、仮説をたて、検証・棄却するというループを繰り返しながら核心にせまってゆく。「古生物学入門」では、研究の基礎能力を楽しく身につける。つまり、緻密な観察力、大胆な仮説構築・検証力、論敵との丁々発止のディベートを制する能力などである。三葉虫や二枚貝など、あ りふれたものが、半年後には、今と全然違って見え、地球科学ののみならず、広く自然・人文科学に通底する学問の楽しみかたに開眼することができる、、、はずである。
鎌田 浩毅 火山地質 由布・九重・阿蘇火山の火山見学旅行

九州の由布・九重・阿蘇火山まで出かけて行き、現地で火山噴火の堆積物を手にとって観察し、実際に起きた噴火現象を推理します。
10月20日(月)14:30吉田南2号館4階412室に集合、夕方に大阪南港を出発し、翌朝別府観光港に着き、マイクロバスで巡検し、阿蘇で2泊宿泊します。23日(木)夕方に別府観光港から船に乗り、24日(金) 早朝に京都に帰ります。1限の講義から出席可能。
後期半期分の実験を集中して行う火山フィールドワークです。船賃・宿泊費・食費などの実費は個人負担です。
[参考書:PHP 新書 『火山はすごい』740円 (生協で販売中)](参考:2001年度実験の記録

齊藤 昭則 可視化
地球惑星科学データの3次元的可視化

様々な地球惑星科学データをGoogle Earth上へ3次元的にプロットし、異なるデータ間の比較を行う。まず、KMLやIDL等の計算機言語、WWWを用いたデータベース、Space physicsを中心とした地球惑星科学について基礎的な事を学び、その後で、オーロラ観測データや火星表面画像などの地球惑星科学の観測データをそれぞれ一つ選んで3次元のプロットを作成し、その物理的な意味を考察する。

石川 尚人 断層探査 京大周辺の断層を探る

京大キャンパスの東縁には北北東方向に走る「花折断層」があり,その一部は周辺の地形に見ることができます。また,花折断層に関係する断層が地下にあるのかもしれません。そこで,この実験では,断層位置の推定に用いられる「γ線探査法」を用いて,キャンパス内外に「花折断層」の枝分かれがないかどうか,探ってみようと思います。

北原 達正 太陽 宇宙天気予報と太陽フレアの解析 太陽からの高エネルギー粒子の流れ(太陽風)は宇宙時代の大きな脅威となっています。現在、日本・アメリカを中心に太陽風の大きな要因であるフレアーの解析を発展させ、その出現を予測しようというプロジェクトが進んでいます。名づけて「宇宙天気予報」。この実験では花山・ 飛騨天文台で撮影した太陽フレアーのHα画像を用いて画像解析を行い、その微細構造に迫ります。
紀本 岳志 生命起源 生命起源を推理する 生命起源では過去6年間原始海洋での非生物的アミノ酸合成に関しての新たなる知見を求めて未知の実験を行っている.この中で2003年までに新しいアスパラギン酸の合成法を発見し,それを結晶化させることに成功した.これからは,いよいよ絶対不斉合成の謎に迫りたいと思っている
鈴木 寿志 古生物

木曽川河畔の三畳系赤色チャート中の緑色斑点

愛知・岐阜県境の木曽川河畔に露出する三畳系赤色チャートにみられる緑色斑点について調べます。なぜそのような斑点がみられるのか、成因を調べるとともに、放散虫やコノドントを用いて、その地質年代も明らかにします。土日を利用した一泊二日の調査旅行を予定しています(交通宿泊費が必要)。

川本 竜彦 高圧実験 地球内部の水を可視光で見る 地球内部でどんなことが起こっているのか知るために、高圧や高温の世界を可視光で覗きます。
自分の目で見たり、CCDカメラでラマン散乱光をとらえたりします。観察を通して、地球内部の水の性質を理解することをめざします。
谷口 慶祐 地震 京都市付近で観測される脈動について

京都市付近で観測される周期数秒の脈動は何によるものなのか、についていっしょに考えましょう。

吉村 令慧 地球電磁気

自然電位発生メカニズムに迫る−ハコニワ実験−

等電位と思われがちな地表面も、面的に測定すると電位の起伏が存在します。その起伏を測定し、地下の状態(地熱活動・鉱物の存在・流体の移動etc.)を推察する物理探査の手法を「自然電位法」と呼びます。自然電位法は、測定が簡便であるため古くから、様々な調査に用いられてきましたが、電位異常の発生要因が複雑であるため、解釈に困難が付きまといます。この実験では、発生要因の一つとされる流動電位に着目し、アナログ実験から自然電位の発生メカニズムに迫ります。