2005年度 地球科学実験B(後期セメスター) 各実験の紹介


2005年度の実験は以下のテーマで行います。受講者は,一つの実験テーマを半期を通じて取り組みます。

 

曜日 教官 分野 テーマ 内容
北原 達正

太陽

宇宙天気予報と太陽フレアの解析 太陽からの高エネルギー粒子の流れ(太陽風)は宇宙時代の大きな脅威となっています。現在、日本・アメリカを中心に太陽風の大きな要因であるフレアーの解析を発展させ、その出現を予測しようというプロジェクトが進んでいます。名づけて「宇宙天気予報」。この実験では花山・ 飛騨天文台で撮影した太陽フレアーのHα画像を用いて画像解析を行い、その微細構造に迫ります。
大塚 成昭 測地 高さの測定(精密水準測量)による地殻変動の検出 この実験での具体的なテーマは「高さ」です。「高さ」の測定は「水準測量」と呼ばれています。この実験では総合人間学部のキャンパスから吉田山山頂までの精密水準測量を行います。君たちの測量結果と先輩たちの結果と比較して地殻上下変動の検出を試みます。前半は屋外で測量を行います。後半は、パソコンでデータ処理をし、発表会に向けてプレゼンテーションの準備をします。 体を動かすことが好きな人、晴れ男・晴れ女大歓迎(何しろ雨に降られると.....)。
紀本 岳志 生命起源 生命起源を推理する 生命起源では過去6年間原始海洋での非生物的アミノ酸合成に関しての新たなる知見を求めて未知の実験を行っている.この中で2003年までに新しいアスパラギン酸の合成法を発見し,それを結晶化させることに成功した.これからは,いよいよ絶対不斉合成の謎に迫りたいと思っている
川方 裕則 地震 断層のすべり方の特徴を探ろう 地震は断層がすべることによって発生する.地震が発生するときに,断層面はどのようにすべるのだろうか?実際に観測される地震の波形から,よくすべる部分とあまりすべらない部分が存在することがわかってきている.どのような部分がよくすべり,どのような部分があまりすべらないのか,摩擦の性質がいろいろに違う物体をバネでつなぎ,ベルトコンベアで引っ張りながら,擬似地震を発生させ,その特徴を探り,地震の起こり方・成長のしかたにせまる.
鎌田 浩毅 火山地質 由布・九重・阿蘇火山の火山見学旅行 九州の由布・九重・阿蘇火山まで出かけて行き、現地で火山噴火の堆積物を手にとって観察し、実際に起きた噴火現象を推理します。10月28日 (金) 14:30実験室に集合、夕方に大阪南港を出発し、翌朝別府港に着き、マイクロバスで巡検し、瀬の本ユースホステルに2泊宿泊します。10月31日 (月) 夜に別府港から船に乗り、11月2日 (火) 早朝に京都に帰ります。1限の講義から出席可能。後期半期分の実験を集中して行う火山フィールドワークです。船賃・宿泊費などの実費は個人負担です。[参考書:PHP 新書 『火山はすごい』740円 (生協で販売中)]
(参考:2001年度実験の記録)
西田 潤一 重力 花折断層の影響は鴨川の東側には顕れているのだろうか、重力で調べてみよう 吉田山近傍の重力異常分布、さらにはγ線による放射能探査は以前に行っているが、いずれも東山通りで終わっている。東山通りより西側、鴨川まではどのような重力異常の分布があるか測定してみよう。
西 憲敬 気象 ヒートアイランドの観測 全球規模の地球温暖化が、大きな社会問題となっている。しかし、これよりずっと身近にあって、より顕著に観測される高温化現象は、都市のヒートアイランド現象である。地面付近の境界層の理論が完全でなく、また小規模対流のシミュレーションも想像以上に難しいため、我々の想像ほどその全貌がわかっていないのがこの現象である。当実験では、精密温度計などを用いて、実際の都市温度分布の観測を行うことを通して、ヒートアイランド現象の理解を目指す。
松岡 廣繁 古生物 化石を採集し、古生物の分類と生態復元に挑戦する 三葉虫、恐竜、アンモナイト・・・。私たちは、過去地球上に生息した様々な「絶滅生物」の存在を知っています。そうした古生物によって構成されていた、現在とはまったく違った生態系が、地球の歴史上存在していたことも知っています。しかしちょっと待って下さい。どうやってそんなことが分かったのか、その復元の過程を考えたことがありますか? 本実験では、1泊2日の巡検を行い、ここで実際に化石の採集と地質の調査を行います。そして持ち帰ったサンプルを用いて、古生物研究の基礎を体験してもらいます。
谷口 慶祐 地震 常時微動の振幅や卓越周波数と断層の関係 垂直方向にずれを繰り返している断層では、多くの場合、断層の両側で地下構造が異なっています。また常時微動の振幅や卓越周波数も地下構造の違いによって異なることから、常時微動の振幅や卓越周波数と断層形状や断層からの距離に何か関係があるかもしれません。そこで、観測を行い調べたいと思います。
釜井 俊孝 応用地質 京都の近世城郭遺跡と地盤災害を考える 聚楽第(じゅらくてい)は、関白、豊臣秀吉の居城として16世紀末の京都に存在した城です。二重の水堀と天主を持つ本格的な城郭でしたが、わずか10年ほどで破却されたため、その構造はほとんどわかっていません。しかし、一部では人工的に埋積された幅40m、深さ9mに達する大規模な堀跡が見つかっており、地震時には広範囲で地盤災害が起きる可能性があります。そこで、この実験では聚楽第跡地で高精度表面波探査及び簡易貫入試験を実施し、堀の構造と埋積土砂の堅さを調べ、遺跡の分布と地盤災害リスクの関係について考えてみたいと思います。
吉村 令慧 地球電磁気 大文字山での自然電位マッピング 大地には、種々の自然現象を原因とする電位異常が存在し、常に電流が流れています。自然電位測定は、主に地下の状態(地熱活動・鉱物の存在・流体の移動の有無など)を推定する目的で実施されるため、地球科学的現象のない場所での測定例はほとんどありません。昨年度実施した大文字山周辺での自然電位測定では、振幅で数100mVの電位異常が発見されました。本年度は、観測網の拡充を行い、電位異常の面的な広がりの確認・発生原因の推定を試みます。